プロジェクト杉田玄白は、今現在は84作品を擁する有名プロジェクトの1つになりました。電子本プロジェクトの1つとしてもとらえられるようになりました。(この文を書いている2000.11.16現在です)
しかし、つい半年前くらいまでは、登録作品はまだまだ少なかったです。それに、フリーソフトウェアとオープンソースがらみを追うためには有効といえましたが、一般的な本はといえば、キャロル著「不思議の国のアリス」・ファラデー著「ロウソクの科学」・デカルト著「方法序説」・ハワード著「明日の田園都市」くらいしかありませんでした。
結構あるじゃんと思った人のために、訳者がすべて山形浩生さんであることを言っておきます。つまり、一般的な本を完成状態にまで持っていった人が山形浩生さんしかいない状態が長いこと続いていたのです。
もちろん、短編をいくつか結城浩さんが訳していましたし、katoktさんが「ピーター・パン」を完成させようとしていました。でも、あの当時のペースだと、おそらく趣意書で勇ましく歌い上げたような状態になるのは遠い先の話になったはずでしょう(今でもまだ早いとはいえないのかもしれないですが)。
それに、長編がもう少しないと、量が質を生み出す状態にならないのです。不思議の国のアリスは確かにすごいですが、それだけではあまたある電子本プロジェクトに埋もれてしまいますからね。
というわけで、何か長編を訳して、発展を後押ししてみようか、と思ったわけです。
それで、訳してみたい長編を考えてみたときに、子どものときに読んだ八十日間世界一周のことを思い出しました。読み進むほどに引き込まれるあの世界。フィリアス・フォッグの超人的・機械的なたたずまい。時間を区切ったことによるサスペンス。すべてがなつかしく、現代によみがえらせるに足る作品であることはまちがいない作品でした。
そして、訳本を読みくらべてみたときに、この作品がこういう文で残ることに耐えられなくなるような文だったことが一番大きかったです。旺文社文庫の訳文だったら個人的に大好きなのですが、旺文社文庫自体がなくなっています。つまり新本では手に入りません。創元推理文庫に入っている文はフォッグ氏の口調が軽すぎて好きになれません。角川文庫の訳文に至っては、もう二度と読み返したくないような文でした(というわけで、一応持っているのですが、参考にはしていません)。
というわけで、「いつか訳してみよう」と心に決めました。
その後すぐ、私が「真夏の夜の夢」「ロミオとジュリエット」として公開している文の元本が、偶然古本屋で200円で売っていました。これはおそらく天が私に命じたのだろう(笑)ということで、八十日間世界一周の訳に着手したのです。
ちなみに、私が八十日間世界一周を公開した直後、いきなり一般的な作品が続々プロジェクト杉田玄白に登録されたのを見て、「この偶然に乗ったのは正しかった」とひとり思ったものです。とはいえ、それらの大半はまだ完成には至っていません。来年あたりにはそれらが完成して、それらの作品をCDにして配布する価値ができてくるといいな、と1人で思っています(そのときには非公式で始めるつもりです)。
2000.11.17